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【みんなのセキュリティコラム(Grafsec・SPREAD共同コラム)】
2021年12月 8日配信
『成年年齢引き下げに伴うサポート体制確立の必要性について』
特定非営利活動法人IT サポートさが
理事長 陣内 誠 様
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私たち「特定非営利活動法人ITサポートさが」は、インターネッ
トを利用するすべての人を対象に、正しくICT(情報通信技術)
を活用して社会をよりよくしていこうとする意識を涵養する事業
を行い、だれもが安心してインターネットを利活用できる社会作
りに寄与することを目的として2005年設立し(法人化は2009年)、
日々活動を続けています。
主な事業としては、子ども達をインターネット関連インシデント
から守るための教育の一環として、「ネットの安心・安全けいは
つコンクール」の運営や学校・PTAでの講演・セミナーなどを行っ
ています。学校や社会教育の場での講演の際、伝えているのが
「私たち一人ひとりが情報化社会を構成する者としての自覚と責
任を持つこと」です。近年の情報モラル教育は、被害防止だけで
なく、子どもを加害者にしないという点にも注力するようになっ
ています。
さてGIGAスクール構想実現化への一連の動きは学校の教育環境を
急速に変化させ、コロナ禍の影響が、情報端末所持の低年齢化に
拍車をかけています。このような状況下で、高等学校の先生方を
一層困惑させているのが成年年齢の引き下げです。2022年4月1日
「成年年齢を18歳に引き下げること」を柱とする「民法の一部を
改正する法律」が施行されます。成年年齢が18歳に引き下げられ
ると、18歳に達した者は一人で有効な契約をすることができよう
になります。このことによって新成人に達した高校3年生が、SNS
を介した「モノなしマルチ詐欺」や「情報商材トラブル」に巻き
込まれるのではないかという危惧があるのです。消費者庁によれ
ば「情報商材」に関連する20歳代の消費者からの消費生活相談件
数は年々増加傾向にあり2020年も対前年比で約12%増加、2015年
と比べても約10倍に増加しているとのことです。また国民生活セ
ンターの調査でも10歳代・20歳代の若者が契約当事者になってい
る相談の割合は増加しています。また、成人を迎えた20歳代の相
談件数は、10歳代の未成年者に比べ、10倍ほど増加する傾向があ
るとのことなのです。成人間もない若者がターゲットにされてい
るのは明白ですが、このターゲットが、改正民法施行以降は18歳
の新成人へ降りてくることが心配されています。これまで未成年
者は「未成年者契約の取り消し」によってこの種のトラブルから
守られていましたが、その庇護が失われることになるからです。
情報化社会は自己責任の社会と言われることがありますが、昨今
の世間の混乱と現行の高等学校学習指導要領などを考えると高校
生諸君に十分な準備ができているのか甚だ疑問です。大きなお世
話かも知れませんが、18歳成人への詐欺被害防止やセキュリティ
知識の向上等に関するサポート体制の確立が必要なのではないか
と心配する今日この頃なのです。
【執筆者(陣内 誠 様)プロフィール】
特定非営利活動法人IT サポートさが理事長
佐賀県警「特定サイバー防犯ボランティア」嘱託
「ITサポートさが」立ち上げの中心的なメンバーの1人で、子ど
もたちをインターネットの有害情報から守るために「情報モラル
を分かりやすく伝えたい」と、小学校の児童や中高の生徒、保護
者、教育関係者向けの講演を行っている。
講演ではこれまでの教職の経験を活かして、小学生にはわかりや
すく、中高生には面白おかしく、時には喝を入れながらの「自分
の身は自分で守る」 をモットーに、インターネットを安全に楽
しく使う術を伝えている。
特定非営利活動法人ITサポートさが
https://www.it-saga.jp/
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